水平分業 自社生産にこだわらず、得意分野に集中して効率アップ

水平分業(HorizontalSpecialization)

製品に拘るバリューチェーンのうち、特定の分野だけを自社の事業として、他の業務を外部委託する手法のこと。

自分の得意な業務活動に特化して強みを発揮

米国の経営学者マイケル・ポーターが提唱した概念にバリューチェーン(VC)がある。企業の活動を機能ごとに主活動と支援活動に分類し、企業の競争力の源泉を分析するためのモデルだ。ここでの主活動とは、

1.購買物流(資材調達など)
2.製造
3.出荷物流
4.マーケティングと販売
5.サービス(修理など)

のこと。支援活動とは、人事・労務管理など主活動を支援する活動を指す。

このバリューチェーンの活動のうち、特定の活動を自社で行い、他の業務を外部委託するのが水平分業だ。水平分業の狙いは、自社の得意分野に特化して、経営資源を効率よく活用する事。全ての活動を単独で行うには、多くの設備と人手が必要だが、必要に応じて外部委託をすれば、より少ない経営資源で自社の強みをいかせる。

また、製造の自由度を上げる狙いもある。例えば、商品設計を変える際は、委託先をA社からB社に変更すればいい。柔軟に使用環境の変化に対応できるわけだ。

逆に、水平分業のデメリットは主に3つ。

1.大きな市場の確保を望みにくい。生産量は外注先の生産能力の制約を受けるため、大量生産が難しい。

2.全体の調整に手間がかかる。何か問題が起きたら外注先との調整で時間が取られ対応が遅れてしまう可能性もある。

3.バリューチェーンから生じる利益を独占できず、比較的利益が小さい。

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IBMに始まり家電や電気自動車にまで普及

水平分業の始まりは米国のIBMのパソコン事業だと言われている。もともとIBMは、法人向けパソコンは全て自社で対応する垂直統合のビジネスモデルだった。しかし、アップルの台頭でパソコン市場のシェアを奪われ始めると、IBMは必要なパーツについて水平分業開始。OSはマイクロソフト社に、CPUはインテル社、マザーボードは台湾メーカーなどから調達、組み立てや販売をIBMが行うという体制で新たなパソコンを作って対抗した。

最近では、垂直モデルが主流だった日本の家電業界や電気自動車でも、水平分業に移行する傾向がある。水平分業によって各社が互いの強みをいかして商品を開発する手法が浸透しつつあるのだ。なお、ファブレス化やOEMも水平分業の一種だ。

ファブレス化→http://begirama2.net/archives/15

OEM→http://begirama2.net/archives/17

●生産体制は垂直統合から水平分業へ!

◯垂直統合モデル
・業界内の企業それぞれが、すべての関連商品・サービスを一体で提供

(利点)
・顧客が他社に乗り換えにくい(乗り換えは、全ての関連商品の買い直しになるため)
・大手のシェアがさらに広がる(ユーザー同士の情報交換がしやすいため)

(課題)
・開発にコスト、時間がかかりやすい(研究開発を全て自社の人材・技術で行うため)
・時代に乗り遅れると膨大な不良債権が生まれる(人材、設備、ノウハウなど)

◯水平分業モデル
・企画実現に必要な仕様を公開し、優れた他社の商品を組み合わせて製品化

(利点)
・主要部品を調達でまかなえられる(研究開発コストを抑えられる)

(課題)
・優れた部品メーカーの交渉力が高まり、利益率が下がる(自社ブランドで販売するが旨味を得づらい)
・規模の強みが出しづらい(大企業だから市場を席巻できる、とはならない)
・競合製品が他社から出てきやすい(他社でも実現しやすい作り方なので)

ようするに

●外部委託を活用すると、少ない資源で自社の強みを発揮できる。
●市場シェアの確保や大きな利益を狙わず、確実に安定した利益を狙う。

ただし!

水平分業をした委託先が競争相手になってしまう場合がある。自社に不足している機能を補えるという点で便利な手法ではあるが、長期的に見た時、本当にメリットがあるかどうかは十分に考える必要がある。

斜陽になっていくものや単発で終わるものに関しては小回りがきく水平分業は有効だが、主力分野やこれから伸びる分野に関しては自社技術の流出になる点を慎重に考慮すべきである。

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